News Feed 11 - 17 - 2015

ゴンドウクジラに関して、フェロー諸島の政府へ水銀勧告

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(ゴンドウクジラに関して、フェロー諸島の政府へ勧告ー2008年12月1日英語版発表)

総理大臣、厚生大臣、貿易産業大臣各位

ゴンドウクジラを人間の食用に使用することを中止する勧告

拝啓

フェロー諸島の人々は何世紀にも渡ってゴンドウクジラの殺戮を行ってきたが、これは食や文化など多方面において生活に欠かせないものであった。

この国で私たちにとってゴンドウクジラが重要であるという理由は多々ある。もしクジラの捕獲ができずに数年が過ぎれば、各家庭に影響が出てくる。そして神の贈り物であるクジラが再び海に姿を現せば、島の人々の喜びは大きい。この食料資源が多くの面で住民の健康を保ち、多くの家庭で飢えをしのぐのに貢献してきていることは疑う余地が無い。

1970年代という最近まで、学校の医師たちは父兄に対して、児童の朝食にクジラの脂肪を必ず加えるよう勧めたものである。

しかし、1977年に初めて、ゴンドウクジラの肉や脂肪、肝臓や腎臓の汚染を記録する調査が行われた。ゴンドウクジラの水銀の含有値が上がったかどうかを確認するために始められたのである。これは、ゴンドウクジラが海洋の食物連鎖で上位に属す生物であり、ほかの調査で海洋生物種の水銀の含有量が増加したこと、また、歯クジラが食物連鎖の最上位に位置していることによるためである。分析した結果は衝撃的なものであった。肉に含まれる水銀値も高いが、それ以上に肝臓や腎臓からは肉の水銀濃度の100倍にも上る水銀が検出された。

こうした理由から、フェロー諸島の保健当局はクジラ肉と脂肪の摂取は一週間に一度とし、肝臓や腎臓は絶対に食べないよう勧告することを決定した。

その後の調査で、さらに人体に悪い影響があることが知られるようになり、勧告がさらにきびしくなった。1998年からの最も新しい勧告は次のようなものである。

脂肪

脂肪に含まれるPCBの含有量が高いことから、成人についてはゴンドウクジラの脂肪の最大摂取を月に1回か2回とする。しかし、成人前の少女及び成人した女性は子供を生むまでゴンドウクジラの脂肪を取らないことが、潜在的なPCBの害から胎児を守るための最上の方法である。

「クジラ肉」

ゴンドウクジラ肉の水銀の含有量は多く、また、クジラの肉を食べることが水銀の主な摂取源のひとつになっている。それゆえ、大人に対してクジラ肉の摂食を月に12食に抑えることを勧める。3ヶ月以内に妊娠することを計画している女性、妊婦、そして授乳中の母親はゴンドウクジラ肉の摂取を控えるべきである。

内臓の肉

ゴンドウクジラの肝臓や腎臓はいっさい食べるべきではない。

現在までの認識を変えるような新しい情報が発表された折には、上記の勧告をどのくらい調整すべきかが考慮される。

過去10年間にわたる科学調査によると、ゴンドウクジラの肉や脂肪の汚染が人体に有害な影響を及ぼす事実は以前よりさらに深刻な状況に陥っている。

現在の調査結果は次の通りである。

1. ゴンドウクジラ肉の水銀は胎児の神経組織の発達に悪影響を及ぼす。

2. 水銀による影響は成長期の子供たちにも見られる。

3. 母親の水銀摂取が子供の血圧に影響する。

4. 脂肪に含まれる汚染物質は免疫組織に悪影響を及ぼす。このため、児童の免疫反応がさらに低下する。

最新の調査によると、

1.ゴンドウクジラの肉を度々食べる者は、クジラの肉の汚染物質によってパーキンソン病に罹る危険率が高くなるように思われる。

2.高血圧症や頚動脈硬化症の危険性は、水銀にさらされることの多い成人に増えている。

現在、ゴンドウクジラの肉と脂肪の汚染物質により生殖機能が衰えたのではないかという危惧から、出生率の調査が行われている。

これらの調査結果はグローバルな視点に立って考慮すべきである。海洋の水銀汚染は広がり続け、一例としてホッキョクグマの毛から以前に比べて10倍以上もの水銀が検出された。

1900年代後半に、環境への毒物となるPCBが使われ始めて環境に放出された。これは1980年頃に禁止されたが、ゴンドウクジラへの汚染率にはそれほどの減少が見られない。殺虫剤代謝産物のDDEも環境を害する新しい化学物質で、その親化合物のDDTは、現在でも世界の複数地域で使われている。さらに、現在、繊維に沁み込ませたり、他の目的で使ったりされる有機フッ素剤やその他の新しい化合物が、ゴンドウクジラの肉を食べる子供の血液の中からより高い濃度で検出された。

最も新しい分析からでも、ゴンドウクジラの水銀濃度は、1グラムにつき平均2マイクログラムと高数値を示したままである。欧州連合では、最も汚染度の高い魚介類に対して、1グラムにつき1マイクログラムを最高値として適用している。ほとんどのゴンドウクジラはこの数値を上回る。アメリカの環境保護局によると、体重1キログラムに対して、0.1マイクログラムの水銀摂取を最高値として制限している。(これはフェロー諸島で実施された調査結果に基づいている。)これによると、体重70kgの成人が一日に3.5グラムのゴンドウクジラの肉を食べると限度に達する。

ゴンドウクジラの脂肪にはPCBやDDE(殺虫剤DDTの分解産物)など、長い間体内に留まる難分解有機化学物質が高濃度で見られる。1グラムの脂肪に含まれるPCBとDDEの平均数値は10マイクログラム以上である。PCBに関して汚染の増加を防止するために定められた制限値がいくつかあるが、ほとんどが1グラムに対して1マイクログラム以下である。

従って、現在ゴンドウクジラの肉や脂肪は、許容量以上に毒性物質を含んでいると結論を下せる。

フェロー諸島の人々は、世界的見地からしても、汚染による人体への影響が大きい。しかし、最新の調査から、妊婦が摂るゴンドウクジラの肉や脂肪の量が以前と比べてかなり減少していることが分かった。このため妊婦の血液から検出した水銀の濃度に低下が見られたが、PCBの含有量は同じであった。多分、PCBの分解は時間がかかるという理由からであろう。

ここ数年来出されている多くの科学文献から判断すると、ゴンドウクジラの肉や脂肪を食べないよう再び勧告することが妥当とされる時代が来たようだ。

下記の署名者は、人間の健康を守るため、最新の調査結果から次のような結論に達した。

ゴンドウクジラをもはや人間の食用として使用しないよう勧告する。

このような勧告をすることは大変残念である。何百年にわたり、ゴンドウクジラはフェロー諸島で食され、何世紀もの間、島の人々を生存させてきた。しかし、時代も環境も変化している。それゆえ人間の健康を守る上で、この勧告は必要であると信じている。

フェロー諸島に住む私たちには、海洋汚染に対する責任はない。それは外部からもたらされたものである。フェロー諸島の人々を調査することによって、汚染問題が注目を浴びるようになったのはなんとも皮肉なことである。しかしその結果、すでに世界中で汚染への規制がきびしくなっている。従って、私たちもまた、結果の重要性を認めるべきである。

当然のことながら、私たちは要望に従って、補充となる情報や関連調査記事などを提出する意向である。

敬具

パル・ウェイヒー医師(署名)       ホ二・デべス・ジョンセン医師(署名)

主任医師                    保健所長

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